Q; 3階に住むX氏のトイレに上階から漏水が発生したと連絡があった。
上階の居住者である賃借人Dに連絡したところ、トイレの便座(C社製)から床の隙間に水が垂れ、下階の天井へと生じた漏水であると判明した。
Dは建物所有者Aに報告するので待ってほしいとの事。
連絡してきたAは6年前にリフォーム工事をした業者Bに確認するので待つようにとのことだった。
漏水は少量だったが、専門業者が来た2週間後には3階のトイレの天井・壁までシミが拡大してしまった。X氏(被害者)は「自分は誰に請求すればいいのか」と管理組合に相談してきた。
A; X氏(被害者)は上階の所有者であるAに賠償請求するのが容易です。理由は以下のとおりです。
1.上階と下階との関係
① 被害者は下階のX氏。
② X氏(被害者)は、上階から漏水しているものの、誰の責任かは分からないので、所有者であるAに対して賠償請求します(民法717条1項の土地工作物責任により占有者の責任を立証できない場合は所有者が責任を負うことが法定されているので、X氏(被害者)は請求が簡易と思われるA(所有者)に請求する。)。
2.上階内部の関係
③ Aは、X氏(被害者)に対して賠償したのちに、占有者Dの使用方法等により漏水したのであればDに対して求償するし、施工ミスであれば施工業者Bに求償するし、製造物責任であればメーカーCに求償する、という関係になります。
3.例外
・漏水の責任が誰にあるのかが明確な場合は、X氏(被害者)は最初からその人に対して賠償請求することは可能ですし、するのが普通です。
例えば、明らかに占有者Dの使用方法が悪くて漏水したのであれば、X氏(被害者)としても、占有者Dの不法行為を理由に、直接Dに対して請求することが可能です。
・他方(あまり想定できませんが)、施工業者やメーカーの責任が最初から明らかな場合は、その瑕疵担保責任や債務不履行の責任追及をすべき契約当事者が所有者Aなので、X氏(被害者)としては、まずはAに請求し、Aから施工業者やメーカーに求償するのが一般的です。X氏(被害者)が契約関係のない施工業者BやメーカーCに対して直接的に損害賠償を請求することは、法律的に不可能ではないものの、ハードルが高いといえます。(編集部)