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認知症、今マンションで起こっていること

高齢者の認知症は2025年には全国で700万人、65歳以上の高齢者の5人に1人、80歳以上では4人に1人が認知症になると厚生労働省から発表され、高齢者のみならず65歳以下の若年性認知症も増加しています。

国としては「新オレンジプラン」を策定、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指すことが施策として掲げられています。

令和元年6月に発表された「認知症推進大綱」の中で国は、基本的考え方として、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しながら「共生」と「予防」※1を車の両輪として施策を推進するとしています。

◆国の考え方、具体的には

○認知症は誰もがなりうるものであり、家族や身近な人が認知症になることなども含め、多くの人にとって身近なものとなっている。

○生活上の困難が生じた場合でも、重症化を予防しつつ、周囲や地域の理解と協力の下、本人が希望を持って前を向き、力を活かしていくことで極力それを減らし、住み慣れた地域の中で尊厳が守られ、自分らしく暮らし続けることができる社会を目指す。

○運動不足の改善、糖尿病や高血圧症等の生活習慣病の予防、社会参加による社会的孤立の解消や役割の保持等が、認知症の発症を遅らせることができる可能性が示唆されていることを踏まえ、予防に関するエビデンスを収集・普及し、正しい理解に基づき、予防を含めた認知症への「備え」としての取組を促す。結果として70歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指す。また、認知症の発症や進行の仕組みの解明や予防法・診断法・治療法等の研究開発を進める。

とあります。

◆認知症とは

認知症の中で一番多いのは、67%を占めるアルツハイマー型認知症で、記憶力や判断力が低下します。

脳梗塞などで起こる血管性認知症は脳の障害が起こった場所により症状が出ます。

レビー小体型認知症は幻視、運動障害など。

前頭側頭葉変性症は同じ言動を繰り返し行動の抑制がきかなくなる。正常圧水頭症は歩行障害、尿失禁が起こる、など特徴的な症状が見られます。

認知症は突然発症する訳ではなく、発症20年前ぐらいから脳にアミロイドβが少しずつ蓄積し、脳が徐々に萎縮することで発症することが解っています。発病4~5年前から徐々に進行してゆきます。この時期の状態をMCL(軽度認知障害)と言い、脳を活性化することで進行の度合いを緩やかにすることが可能です。

◆マンションでどのようなことが起こる?

マンションの建物は、階段室型でEVなし、出入りがオートロック方式、EVがあってもスキップ方式など様々で、自分のマンションの構造を知ることにより、どのようなことが起こりうるか想定しておく必要があります。

高齢者イコール認知症というわけではありませんが、糖尿病の人、足腰に不安のある方に発症する傾向が見られるため、個人の生活に起因する部分も多くあります。早期に認知症外来で検査してもらい認識することが求められます。症状によっては薬を服用することで発症を遅らせることも可能だといいます。

高齢で認知症の人が多くなると、マンションではどのような事が起こるか挙げてみましょう。

○エレベーターがない場合、階段の昇降が不自由になる。

○マンション入口の段差のため車イスが使えない。

○オートロックの場合、操作の仕方が解らなくなりマンションに入れなくなる。

○近所の方の顔が認識できなくなりコミュニケーションがとれなくなる。

○外出したまま自宅がわからなくなり行方不明となる。

○不意に他の住戸を訪問する。

○メールボックスが開けられない。

○ゴミを出す日を間違える。

○ゴミを出すこと自体を忘れ部屋がゴミ屋敷となる。

○買い物など外出ができなくなる。

○エレベーターの中や開放廊下で粗相をする。

○夜間など大声を出すことがある。

○管理員さんに無理難題(本人はそう思っていない)を持ちかける。

○封書や配布資料などが理解できない。

○理事会の仕事ができない。

○管理費など支払いを忘れる。

○予定を忘れる。

○同じことを何度も繰り返す。

○漏水事故をおこす。

○ガスの消し忘れによる火災

○駐車場での事故

○物を盗られたと騒ぐ。

○誰かが家に入ってきたと言う。

○管理員がMCL(軽度認知障害)になった。

これらの行動に対し、管理組合はどんな対応を行ってゆけばよいのでしょうか。

◆管理組合が取りうる対応とは?

まず居住者名簿を整備しましょう。特に要援護者の把握、他所に住んでいる家族や親戚の連絡先、これら名簿提出をしない居住者に対しても、拒否されないように名簿の作成を義務づける「規約」「居住者名簿細則」を作成して対応することをお薦めします。

又、居住者全員で見守る気持ちを持ってもらうため、マンション内のコミュニケーション活動を推しすすめましょう。(浜管ネット通信第27号1ページ参照)。

認知症サポーター制度※2で学び居住者がお互いに助け合う雰囲気を醸成することです。

次に、認知症を発症し、介護保険の適用を受けるためには介護認定を受けることが一般的です。その時の相談先としては、地域包括支援センターがあります。横浜市の場合地域ケアプラザの中にあり、およそ中学校区に一カ所あります。このセンターには保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャー、が配置されており、これらがチームを組んで介護予防や援助を行っています。介護サービスを受ける場合、最初に相談する場になります。

管理組合はこことの関係を密にしておくことが必要です。管理組合は建物・施設の管理をしていれば良いという時代は終わりました。

平成30年国交省のマンション調査でも62.8%の方が自分の居住しているマンションを終の住処にしたいと思っています。管理組合は居住者が安心して生活ができる環境の整備を行うことが必要なのです。        

                                          (浜管ネット会長 加藤 壽六)

 

 

※1「予防」とは、「認知症にならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味です。

※2 認知症サポーター制度について

認知症について正しく理解し、認知症患者やその家族を見守り生活上の細かな支援を行うボランティアを養成する制度をいいます。

自治体や企業・団体などが実施する所定の養成講座を受けた人は認知症サポーターとなり、目印としてオレンジ色のブレスレットをつけます。

国は認知症サポーターの人数を令和2年度末までに全国1,200万人にすることを目標にしています。

また、認知症サポーター養成講座を修了した者が復習も兼ねて学習する取組みの推進も行っています。

横浜市の認知症サポーター養成講座受験者の累計は平成30年3月時点で300,503人だそうです。そして毎月どこかの区で認知症サポーター養成講座を開催しています。

管理組合や自治会などで10人~20人がまとまれば出張講座もあります。

開催希望の2ヶ月前までに、参加者数、希望日時を2通りぐらい、開始時間、開催場所をFAXかメールで申し込んでください。

横浜市認知症サポーターキャラバン事務局

(認定NPO法人市民セクターよこはま)

開設時間:月曜~金曜10時~16時 

TEL:045-222-6501 FAX:045-222-6502

E-MAIL:mate@shimin-sector.jp

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