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そもそもウィルスって何?

~正しく恐れるとはどういうこと?~

吉村 順一(理事・防災WG)

■そもそもウィルスって何だ

「動的平衡」で有名な福岡伸一青山学院大学院教授によれば、ウィルスとは「私たちの細胞の中にあるゲノムの一部がちぎれ飛んだ遺伝子のかけら」だという(朝日新聞21年2月28日)。つまり「ウィルスは本来、私たちを含む大きな生命圏の一部」であって「完全に撲滅したり、排除したりすることはできない」。したがって「長い時間軸で、リスクを受容しながらウィルスとの動的平衡を目指すしかない」というのである。さらに新型コロナウィルスも「やがて新型でなくなり、通常の風邪ウィルスになっていく」という。

幼児期にはしか(麻疹)にかかった経験のある方は多いと思う。今では1歳児にはワクチン接種が義務化されており(といっても副作用を危惧する親もいるので、対象児のおおよそ95%が接種)、このことによってはしか(麻疹)の集団免疫ができていることになる。しかし、まれに発症する人が出ることがあるがそれは、はしか(麻疹)ウィルスが潜んでいることの現れでもある。

■終息に向かうには

新型コロナウィルスも集団免疫を得ることで終息に向かうと考えられている。では一体どの程度の人が免疫を獲得したら「終息に向かう」のであろうか。

感染症の世界では「集団の何%が免疫を獲得すれば終息していく」という集団免疫率という考え方があるそうだ。その前に基本再生産数(RO)(ある感染者が免疫のない集団に入ったときに直接感染させる平均人数のこと)というものがあり、これを用いると、(1-1/RO)×100で集団免疫率が導き出せる。ちなみに新型コロナウィルスの基本再生産数は1.4~2.5と試算されているから、日本の場合、29~60%程度の人が免疫を獲得すれば終息に至ると理論上考えられている。(以上、「コロナ後の世界を生きる」収蔵「新型コロナウィルスとの共存」―感染症に強い社会へ(高山義浩著)から引用)

■新型コロナウィルスがもたらしたもの

今回のこの新型コロナウィルスの感染拡大は、われわれにいったい何をもたらしているのだろうか。「中国武漢で集団感染が起きている」と報道されてからすでに1年以上が経過し、感染拡大は世界中でいまも続いている。その現実は、人と自由に会うことができない、移動もできない、つまり人間としてごく当たり前のことができないということだ。

感染症に対する対処法の第一は感染者の「隔離」である。中国武漢では、1000万都市が丸ごと「隔離」=都市封鎖(ロックダウン)された。感染初期の武漢の様子は「武漢日記」(封鎖下の60日の魂の記録/方方Fang Fang著)で知ることができるが、病院は治療を求める患者であふれ、まるで行き倒れのように死者が増えていった。中国は1000万都市の封鎖に踏み切るほかなかったのであるが、ロックダウンされた市民の不安と焦燥はいかばかりだったろう。感染者は隔離され、非感染者は感染しないように人と会うことを制限される。爆発的感染拡大(オーバーシュート)を抑えるにはこれしか方法はない。

世界を自由に行き来できる社会の実現が、皮肉にも世界中に感染を拡大させる結果になってしまった。

参考までドイツのメルケル首相の演説(2020年3月18日)を添えておこう。

「私は保証します。旅行および移動の自由が苦労して勝ち取った権利であるという私のようなものにとっては、このような制限は絶対的に必要な場合のみ正当化されるものです。そうしたことは民主主義社会において決して軽々しく、一時的であっても決められるべきではありません。しかし、それは今、命を救うために不可欠なのです。」

■身近なところで起きている変化

観光業や飲食店などは目も当てられない惨状だ。お気に入りの店がつぶれやしないかと不安になり様子を見に出かけてみると、やはり料理に熟達な、高齢の店主はさっさと店をたたんでいたりする。街の風景もこの1年で相当変わっている。

■今後の対策のポイントは?

新型コロナウィルスは人と人との接触でうつっていく。その対策はできる限り人との接触を控えるということに尽きる。しかし、新型コロナウィルスに感染した人のおよそ8割は、誰にも感染を広げていなかった、という専門家もいる。集団感染さえ防ぐことができれば、感染の広がりは大幅に抑えることができるというのである。

管理組合はもし自分のマンションで患者が発生したらと極度に恐れることはない。むしろ理事会やイベントなどで集団感染(クラスター)を引き起こさないことの方が重要だ。

集まりは極力少人数で、オンライン参加できる方を増やすなどの工夫も必要だろう。

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