イベント報告

ホーム >  イベント報告 >  2019.8.3 大地震が起こったら管理組合はどうする?

2019.8.3 大地震が起こったら管理組合はどうする?

 

8月3日(土)ハウスクエア横浜で、今井章晴氏(特別非営利法人耐震総合安全機構(JASO)理事)を講師に、「建物の復旧はどのように行われるのか~事前に立てる復旧計画~」と題するセミナーを開催しました。(主催:かながわマンション管理組合ネットワーク 共催:横浜マンション管理組合ネットワーク)

横浜では今後30年間に震度6以上の可能性は81%と、いつ大地震に見舞われてもおかしくない状況にあります。管理組合は、その時になってどうしようと迷うことなく、「平時」における備え、「発災直後」の安全性の確認、「落ち着きを取り戻した時期」に取り組む機能の回復、「復旧計画」に基づく速やかな復旧活動など、管理組合が取り組むべき活動を事前に準備し、時系列的に示した「復旧計画タイムライン」に沿って行動することが不可欠です。

 

今セミナーの要旨は以下のとおりです。

1.熊本地震の特徴

 震度7の地震が28時間に2回発生し、余震は年末まで4000回に及んだ。マンション被害で人命は守られたが、崩壊した建物もあり、ピロティの被害・非構造壁の被害は大きかった。時間が経過しても復旧や解体への道のりは長い時間を必要とした。軽微な被害のため住み続けられるマンションは、構造耐震指標「Is値」が大きく耐震性が高い。Is値=強さ×粘り×形状×劣化で表す。このIs値が0.6以上の場合危険性は低く、0.3以上0.6未満の場合危険性があり、0.3未満は倒壊又は崩壊する危険性が高い。マンションは「生活を守るシェルター」と言える。。

 復旧の合意形成に時間は要したものの、ピロティ形式でも柱巻補強、ブレース補強により復旧することができている事例は多く見られた。また、非構造壁の損傷が大きかったマンションも復旧している事例は多々ある。解体という決断にも慎重な調査と判断が必要だ。

 

2.JASOの耐震改修の実績

 2006年耐震改修促進法が改正され、耐震診断の必要性が認識されるようになり、耐震化の歩みは着実に進んでいる。JASOは安全な住環境を整備するために、東日本大震災や熊本地震で被災された方々へのヒアリングを基に、「マンション地震災害 事前復旧計画タイムライン」を作成した。

 

3.「マンション地震災害 事前復旧計画タイムライン」

(1)平時における事前の備え

管理組合+住民一人一人が、被害想定、避難場所の確認、連絡簿の作成・防災備品の備蓄、日頃からのコミュニティ形成、構造・生活を守る耐震化に備える。

(2)地震発生直後に行う事(地震後1~2日)

①大きな揺れが収まったら慌てずに避難

②住民の安全確認・救助活動

③建物の点検と片付け

④災害対策本部の設置 情報収集、連絡先名簿整備、安全が確保できれば住み続ける。

(3)生活再建に向けた手続き

 1)ライフラインやエレベーターの復旧、建物の応急処置、給排水・ガス・電気など専門家への依頼し使用再開に努める。

 2)情報収集

 3)各種調査・判定

①応急危険度判定 発災直後速やかに/二次災害防止が目的/自治体職員又は応急危険度判定士

②被害認定調査(罹災証明書) 1・2週間~数ヶ月/生活再建支援のため/

         被災者が自治体へ申請(自治体職員が調査)

③地震保険調査 管理組合が保険会社に連絡

④被災度区分判定 落ち着いた時期/管理組合が日本建築防災協会の

資格者に依頼(有料)

4)段階を踏んで進める建物の復旧

 ①継続使用 被災前の耐震性能と同程度の補修・補強

 ②恒久使用 建築基準法・耐震改修促進法に規定されるレベルに引き上げ

 ③目標設定により結果が変わる

5)復旧計画(専門課の意見を求め復旧計画をまとめる)

 ①復旧目標

 ②工事範囲

 ③仮設計画

 ④美観

 ⑤工事中の防犯等生活環境、居住性

 ⑥住戸内立入り工事の可否

 ⑦だき合わせ工事 大規模修繕までの期間やマンションの経年

 ⑧工事費

6)復旧設計

 復旧計画が決まれば、設計・施工会社選定・工事へと大規模修繕と同様の手続きで進める。

(4)復旧に導いた事例

  管理組合は建物の復旧計画を専門家に依頼し、「復旧の目標を設定」して「住民説明会」を開催し「解体・修繕」を総会決議する。修繕が決議されれば専門家に「復旧設計」を依頼し「住民説明会」を開催し、設計・施工会社選定を総会決議して「復旧工事」を発注する。このように手順を踏み進めることが必要である。

①非構造壁の被害と復旧

 住戸内に工事用スペースを設けた事例、一時引っ越して行う復旧事例、住みながら行う復旧事例等、状況に応じて復旧方法を選択する。

 ②地震後の生活を守る復旧

  1) バルコニーに避難経路を確保

  2) エキスパンションジョイントの復旧・改修と段差解消

 ③受水槽について考える

1) 受水槽がスロッシング現象により破損しているケースもある

2) 受水槽を災害時の水瓶として自前の水槽を維持する意義がある

3) 消防水利としての利用価値を消防と打ち合わせることも意義あり

 ④ 電気温水器周辺配管の破損を確認し回収する。

 

5.JASOからの提案

 (1) マンションの住民へ

  1) 1981年(昭和56年)5月以前の旧耐震基準のマンションは耐震診断を行

い、必要な耐震補強をする。

  2) 新耐震基準のマンションでも、ピロティがある場合は耐震診断を行い耐

震性を確認する。

  3) 建築設備の耐震性を確認する。

  4) 日頃から相談できる専門家(設計者・施工者)を見つける。

  5) 住民間のコミュニティを日頃から深める。

 (2) 行政へ

  1) 被災後の行政対応の流れを、平時から住民に説明して下さい。

  2) 応急危険度判定や被害認定調査の目的をよく説明して下さい。

  3) 被災後困窮した住民が行う「被災度認定区分判定」に支援制度を。

 (3) 専門家へ

  1) 地震発生前から住民との関わりを持つ。

  2) 防災ボランティア等の自治体の登録を行い、他地域の支援も行う。

  3) 被災度区分判定氏の資格を持ち、事前にスキルを磨く。

  4) 設計者・施工者・検査会社などのネットワークを作り災害に備える。

特別非営利法人耐震総合安全機構(JASO)理事 今井章晴氏

会場風景

ページの先頭へ

特定非営利活動法人
横浜マンション管理組合ネットワーク

〒232-0014 横浜市南区吉野町2-5
サウスライン横浜 4階 A

TEL:045-341-3160
FAX:045-341-3340