9月11日18時30分からLプラザで建築分科会Bグループによるセミナー「大規模修繕工事―見積書の読み方part5」を開催しました。
このテーマは大規模修繕工事の見積書が分からない、工事費の妥当性が判断できないといった相談が多い中で、今回は大規模修繕工事の中でも重要な工程と位置づけられる「下地補修工事」にスポットを当て、「実数精算」と「下地補修工事の動画」による解説を行いました。
第一部は浜菅ネットの尾崎京一郎理事(技術部会長)が「大規模修繕工事の見積書の読み方」と題して講演しました。要旨は以下の通りです。
「実数精算とは」
➀ 改修工事における独特な工事項目
② 竣工図面では確認できない劣化部分の工事数量は、建物調査時に現地で
確認
③ 劣化部分が確認できるのは、通常歩行が可能な範囲、手の届く範囲
④ 調査範囲内で確認できた不良個所から建物全体の劣化数量を推測し、改
修工事対象数量を想定数量として設定し、施工会社へ見積依頼する
⑤ 実際に工事を行う劣化数量(実数)を確認できるのは、工事着工後に足場
が架かってからの施工会社による全数調査による
⑥ 全数調査を行って算出された実際の数量と、見積依頼時の想定数量との
差を精算することが実数精算
「実数精算の対象項目」
1.下地補修工事(補修を要する部位の写真9を含む)
➀ コンクリートのひび割れ補修数量
② 鉄筋の発錆によるコンクリートの押出し箇所(鉄筋曝裂)の補修数量
③ モルタルの浮き補修数量
④ モルタル・コンクリートの欠損補修数量
⑤ 補修肌合せ数量
⑥ 脆弱塗膜撤去数量
2.外壁タイル工事(補修を要する部位の写真6を含む)
➀ タイル貼替え数量
② タイル浮き補修数量
③ タイル目地脆弱部・欠損部補修数量
3.実数精算の手順と留意点
➀ 管理会社との工事打合せ会議で、劣化数量確定の協議、実数精算の承認
② 実数が想定値より少ない場合は、工事代金を減額
③ 実数が想定値より多くなった場合は、工事代金は増加
④ 実数精算項目の補修工事が増額になった場合に備え、増加費用を賄うた
めの予備費を予算化しておくことが必要
⑤ 管理組合の総会時において、大規模修繕工事の施工会社と工事予算の承
認を得るときには、工事予算の予備費を足して承認を得ることが必要
⑥ 予備費がないと、想定以上の劣化数量が出た場合、必要とする修繕に対
応できなくなる
⑦ 設定した想定値より実数が上回ると、「見積金額より工事金額が増え
た」と理解されてしまう場合があるが、本来必要な工事費である
⑧ 見積依頼時に、正確な劣化数量を確定して工事内訳明細書の数量を設定
するのは極めて困難であり、そのために実数精算項目が存在する
4.見積書2社分比較
下地補修工事の見積事例として、見積をする業者に同じ仕様を示しても、見積書の内容・表現は異なる。管理組合としては専門家の協力を得ながら内容を確認することが望ましい。
第二部は内訳明細書と動画を使用し、躯体回復工事(下地調査~亀裂補修)を
浜菅ネット専門業部会 依藤仁氏が、躯体回復工事(モルタル浮き補修~補修跡肌合せ)を同専門業部会 岡田敏央氏が、外壁タイル工事(下地調査費用~薬品洗浄)を同専門業部会 天田裕之氏が講師として講演しました。私もそうですが管理組合の理事では、写真や説明で理解できないことが多くあります。内訳書の項目説明と動画で説明し示して頂き、よく理解ができました。ありがとうございました。
見積書の読み方をテーマとしたセミナーは今回で5回目を迎え、過去から評
判の良いセミナーですが、今後も継続していくとの発言を得て期待する次第です。講演終了後は個別相談会が同会場で行われました。