あるマンションでは共用排水管の改修工事を計画している。
現状の排水管は、白ガス管の内部にエポキシ塗装を施した「耐食鋼管」であるが、更新時の材質を樹脂製「耐火VP管」で設計したところ、以下のような質問があった。
Q1.区分所有者が起こした火災で、排水管内が塞がれ使用不可能になった場合、専有部内に設置された共用排水管復旧費用は、区分所有者が掛けた火災保険か、あるいは管理組合で掛けた火災保険のいずれが適用されるのですか。
A1.管理規約で、設備全体を(細部に渡って)共用部分と定義していれば共用部分の火災保険(が適用され)、“専有部分に属する箇所は専有部分”と区別して定義してあれば、保険会社側も同様に専有部分の火災保険で対応します。
Q2.上階から排水禁止が何日も続く場合、慰謝料などは火災保険で支払われるのでしょうか?
A2.故意・重過失でなければ火災事故は「失火法」が適され、賠償責任は免れることになります。したがって慰謝料等は保険金支払いの対象外となります。
Q3.材質が鉄管であれば漏水の心配はありますが、火災時は、排水管延焼被害を免れることができます。しかし、管理組合が樹脂系の配管に更新した場合、火災事故の保険金支払いの対象となるのでしょうか?
A3.火災事故発生時の支払保険金に関しては、特に鉄管でもVP管(塩ビ管)でも原状回復を基準として支払うため、両者に特段の違いは生じません。
逆に、加入する際に保険料に違いが生じるかというと、建物全体での耐震性能・防火性能によって保険料が違うことはあるものの、設備が「耐食鋼管か」「耐火VP管か」の違いによって保険料が異なることはありません。