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帳票類の閲覧請求

Q: ある区分所有者から、過去5年間の会計帳簿、什器備品台帳、その他帳票類の閲覧請求がありました。閲覧の理由が付されていなかったので再提出を求めました。1日では閲覧完了が無理と判断し3回にわたる閲覧予定を示しましたが、監事の立会を求めてきました。理由には「健全な会計処理を祈る」と記載がありましたが、閲覧・監事立会を認めるべきでしょうか。

 

A:管理規約では、会計の帳票類の作成、保管について「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所を指定することができる。」となっています。

<閲覧の理由は必要か>

閲覧の理由が付してなければ、求めるのは当然といえます。会計監査を経ている会計帳簿等ですから、閲覧理由をより明確にしてほしいというのが理事会の立場です。

<組合員名簿の閲覧対象は?>

組合員名簿は、個人情報保護法対象ですから、閲覧できるのは住所、氏名のみで、年齢、家族構成、勤務先、緊急連絡先などは対象外となります。

「その他帳票類」とは領収証、請求書、管理委託契約書、修理工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券及び預貯金の残高証明などがあげられます。

5年分の会計帳簿等帳票類の閲覧となれば、相当の書類になるので複数回の閲覧機会を設定したのは良い準備だといえます。しかし、閲覧申請者が立会人を監事に指定し、強い要求であっても監事の立会を求める理由にはなりません。多数の書類を閲覧し散逸させることがあってはならないので、理事長や理事長が指名した人が複数で立ち会うことになります。

<謄写や写真撮影はできる?>

今回閲覧者の要求にはなかったようですが、帳票類の謄写や写真撮影を要求されたらどう対応すべきかについては、裁判所の判断は分かれています。

東京高裁平成23年9月15日判決は、「謄写請求が認められるか否かは、規約が謄写請求を認めているか否かによる」として謄写請求は認められないとする判決を示しました。

ところが、大阪高裁平成28年12月9日判決は、「規約に謄写請求を認める規定がないにもかかわらず、謄写請求を認める」判決を示しました。管理組合と組合員の法律関係は、実質的に見て準委任であるとし、民法645条(受任者の報告義務)を類推適用して、報告義務の、履行として、原則として、組合員の求めがあれば、規約上閲覧が認められた文書だけでなく、その裏付資料となる原資料についても閲覧させなければならないとし、閲覧させる文書については写真撮影の請求も認めています。

「規約にないから謄写は認めない」と主張することは、この判決がある状況でリスクを負う可能性があります。基本としては現行規約では謄写を認めないわけですが、謄写が可能であることを前提としつつ、閲覧対象帳票類のルール化を進め、規約で定めることが必要です。(編集部)

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