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協力金を払えば理事を辞退できる?

理事会協力金訴訟(横浜地裁判決 平成30年9月28日)

 

唐突な質問ですが、理事会協力金を払えば理事を辞退できるという規約があれば、あなたは辞退しますか。但し、2年分12万円を一括で支払ってくださいという規約だったら・・・。

 

管理組合の定期総会が近づくと理事の順番を心待ちにしている人、やりたいけれど都合がつかず悩む人、できれば順番が来ないでほしいと思っている人等区分所有者の気持ちは様々です。自分はできないからと同居の家族を立てることはごく一般的に行われていますが、単身者ではどうにもなりません。

そもそもこの規約は違法ではないかと裁判がありました。(横浜地裁判決 平成30年9月28日 平成29年(ワ)第2261号)

【訴訟の概要】

本件マンション(11棟364戸の団地)に居住する原告が、管理組合を被告として、➀管理組合規約細則に基づき支払った理事会協力金12万円を不当利得として返還請求をした。(当初は協力金を支払わず債務不存在訴訟を提起したが、その後支払って訴因を変更) 

②被告が本件訴状写しを組合員に配布したことにより、原告の印影を他に公開・公表されない利益を侵害したとして22万円の損害賠償を請求した。

【理事の選出等に関する細則】

竣工から20年を経過し、組合員の高齢化や大規模修繕等管理業務の複雑化に対応するため、平成25年理事会制度等検討委員会を設置し、資格要件の緩和や理事会協力金の採用を検討。

アンケートの実施・説明会・意見交換会等に1年かけ、平成26年の定期総会でこの細則を満場一致で可決し、平成27年から施行された。

➀細則は理事の任期は2年とし、定数22名の内半数改選

②各期において、各番館から最低1名の理事を選任 

③各期の定期総会前に2期後の理事候補者を選出 

④理事就任を辞退する場合は、他の理事有資格者の内諾を取る。内諾を取れなかった場合、理事会協力金(月額5,000円、2年任期12万円一括払い)を管理組合におさめる。但し5年以内に理事に就任し、期間を全うすれば協力金を返還する。

⑤本件細則に定めのない事項が生じたときは、理事会で協議し、決定する

という細則でした。

【本件訴訟の争点】

原告は平成28年、この細則に基づき、理事候補者に選任されたが、組合活動を辞退する届出書を提出。平成29年理事会は理事会協力金の支払を求めたが、原告は、本件細則が法令違反であり、無効であることを理由として支払わず、訴訟を提起した。

  • 理事会協力金:原告は、理事会協力金の支払義務の猶予又は免除に関する規定がないこと、また、金銭的な余裕がない弱者に対して例外規定を設けず、支払い義務を負わせ不合理であり、公序良俗に反し無効であると主張。被告は、理事の担い手の確保、理事に就任しない団地建物所有者に対して一定の金銭的負担は求めることは、団地建物所有者間の衡平を図るものであると主張。
  • 訴状の印影公開:原告は、被告が訴状の印影を公開し、原告の法律上の利益を違法に侵害したと主張。被告は、訴状は訴訟記録として閲覧及び謄写され得る書面であり、利害関係及び関心を有する組合員にだけ配布されたもので、違法性はないと主張。

【裁判所の判断】

  • 細則の有効性(理事会協力金)

1棟、364戸からなる大規模な団地であり、これに応じて理事の職責は重いと解される。

細則4条により理事候補者とされながら理事に就任することを辞退し、理事の職務を負担しようとしない組合員に対して一定の金銭的負担を求め、組合員間の不公平を是正しようとすることには、必要性と合理性が認められる。

➀本件細則が慎重な手続きを経た上、団地総会で満場一致で制定されたこと

②理事会協力金は月額5,000円であり、理事に就任した者の負担内容と比較すれば、その負担は過大とはいえない

③理事会協力金は、その後、5年以内に理事に就任し、任期満了まで努めれば返金される

④第〇〇期および第〇〇期の理事候補者22名の内14名が理事就任を辞退したが、理事会協力金の支払を拒んでいるのは原告だけで、本件細則が理事の選出方法として不合理とはいえず、公序良俗に反して無効であるということはできない

と判断された。

  • 違法性の有無(訴状の印影公開)

訴状の写しには、表紙部分に原告の署名と押印があったほか、各ページの上部に捨印として原告の印影があった。コピーの影響等により字画が途切れ、外周部が欠けるなど不鮮明な状態であった。

また、写しの添付にあたり原告の電話番号を消去するなど原告に対する配慮を示している。被告が、本件訴訟が提起された事実を組合員全員に通知したことは、管理規約の規定に照らしても正当な行為であったと認められる、と判断された。

 

【まとめ】

理事のなり手不足は多くのマンションで深刻な課題となっています。本件は理事の就任を辞退することに関して、一定の金銭的負担を求める細則を有効とする判決でしたが、年金暮らしの高齢者が5年以内に理事を務めることができるか、状況によっては更なる検討が必要であろうと考えます。

また、印影の公開については、本件は不法行為に当たらないと判示しましたが、注意喚起が必要であると理解します。

宮井 直哉(理事)

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