5月25日、浜管ネット第25回通常総会が開催されました。
総会の議事終了後、日本マンション学会理事・関東支部長 平澤修様による記念講演が行われました。
講演は、「管理不全はなぜ起きるか」~高経年マンションの現状と住民意識~と題して、居住者の高齢化、建物の経年化、役員のなり手不足など管理不全を引き起こす要因のほか、管理組合運営の観点からいくつか問題点を指摘し、話された。要旨は以下のとおり。
1.「終の棲家」となった高経年マンション
昔はマンションを購入後、一軒家に移るという時代もあったが、今は、横浜市でも全居住者372万人の約4分の1が65歳以上で、マンション全体の世帯主の4割以上が60歳以上と高齢化が顕著だ。さらに全住宅160万戸の約4割が分譲マンション、その内7万戸(1000棟以上)が築40年以上と高経年化している。しかし、設備や技術の向上により住環境の整備が進み、終の棲家とする人の増加がこのデータからうかがわれる。
2.管理不全に拍車をかける要因
なぜ管理不全が起こるのか、いくつもの要因が相互に関連しているということが考えられる。
➀ 高齢者理事中心の管理組合運営
② 年金生活者の増加による資金不足
③ 空家化・賃貸化
④ 居住者の無関心(とりわけ中途、次世代入居者の無関心)
⑤ 単年度輪番理事制度がもたらす理事会形骸化
⑥ 管理会社や設計事務所提案の鵜のみ
3.大規模修繕の変遷と管理の実態
大規模修繕工事は回を追うごとに内容が変わる。
第1回目は入居時に定められていた管理会社のもとで実施し、多少の課題を感じつつ計画通りに進む。
第2回目は設備の劣化が目立ちはじめ、将来、資金は足りるのか等、専門委員会の設置や設計監理方式の導入の検討を始めることになる。
第3回目は大規模な設備の更新が必要となり、監理を誰にどのように委ねるか、管理組合の課題となってくる。回を重ねるごとに資金計画や、専門知識を持つ善良な専門家の確保が、切実な問題として管理組合につきつけられる。
4.高齢者による管理組合運営と中途(次世代)入居者の意識
高経年マンションの活動の中心は「団塊」前後の世代が理事会をリードし、中途(次世代)入居者は活動に消極的だ。今後30~40年と継続していくマンション生活を考えると、若い世代の積極的な関わりが求められる。現在活動している「団塊」世代もあと5年程度が活動の限界。マンション寿命を80年と考えれば、中途(次世代)入居者の活躍がなければ管理不全となることは必至だ。
5.管理会社とコンプライアンス
管理会社の推奨する工事をうのみにせず、現状のままで何が問題か、ほんとうに必要な改修工事なのか、棟別に費用負担をすべきではないか等、管理組合が主体的に検討すべき課題は多い。
修繕に関して何の疑いもなく管理会社の提案を受け入れるのは、望ましいことではない。管理会社もコンプライアンスを逸脱することは許されない時代である、と考えなければいけない。
6.首都圏大団地の事例から
中層棟と高層棟からなる高経年マンション(団地)で、EVの設置数が異なるのに一律の修繕積立金を集めていることに異論が出た。公平でないという理由から、棟ごとに区分経理を行うよう求められている。
さらに、専門委員会の答申を無視して、理事会が、管理会社が提案した直結増圧方式への転換を採用して紛糾しているところがある。管理会社の意のままになるのではなく、区分所有者の利益を最優先に考え、議論を尽くして管理組合の方針を決めてほしい。
管理会社に委嘱している管理組合においては、区分所有者の権利と義務を放棄することなく、決して管理会社任せにせず、信頼できる専門家・専門業者の選定・依頼を自ら行い、適切な維持管理のもと「わが子に対する負の資産」とならないよう努めて頂きたい。