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管理運営部会 防災WG

横浜で大震災が起きたらどうなる?
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去る2019年(平成31年)4月20日、日本マンション学会福岡大会では「被災マンションの課題とそれを踏まえての提言」と題したシンポジウムが開かれた。以下に福岡大会で学んだことをまとめてみた。

熊本地震では分譲マンションの約8割が被災したといわれる(熊本市の分譲マンションの数は推定710棟、3万4,933戸)。その内、全壊は19件、大規模半壊24件、半壊158件(17年9月30日現在)である。半壊以上の被害は全体の30%におよぶ。 都市型の地震であったことから、東日本大震災のときのマンション被害を大きく上回る被害状況になっている。

横浜市に置き換えると、約1,900棟ものマンションが半壊以上の被害を受けることになる(横浜市の分譲マンションの数は推定6,500棟)。 このような被害を受けたとき、マンションでは一体どのような復旧活動が行われたのだろうか。

地震で被災した建物の調査・被害判定方法には、次の4種類がある。

1.応急危険度判定 市町村が緊急に行い、余震による二次被害を防止するのを目的としている。「調査済」「要注意」「危険」に区分される。「危険」とされた家屋の住民は、もう住めないと思いこむ方が多い(実際は、そうとは断言できない。)。

2.り災証明 内閣府が定める「災害に係る住家の被害認定基準」に基づく調査で、市町村が実施する、いわゆる「被害認定」のこと。公的資金の援助や税金免除等の対象となる重要な調査である。 「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」の4区分がある。「お金」に直結するので判定に不満な被害者は、何度も再調査を依頼することも。

3.地震保険 「地震保険損害認定」といわれるもので、保険会社が定める基準に基づいて実施される。

「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つの認定がある。マンションの復旧資金に充当されるので、再建資金として重要、かつ、有効であると評価されている。

4.被災度区分判定 地震で被災した建築物の被災度を判定し、復旧に際して適切な判断をすることを目的とする。構造的なダメージを受けた建築物を復旧するには不可欠な調査であるが、被災した所有者が依頼しないと行われず、有料(通常、1日程度20万円ほど)となることから認知度が低い。「軽微」「小破」「中破」「大破」「倒壊」の区分がある。 福岡大学の古賀一八教授は、この調査は大規模災害における建築物の復旧を考えるときに欠かせない調査であり、この判定ができる建築士の養成が課題だと指摘している。資格者になるには「再使用の可能性を判定し、復旧するための震災建築物の被害度区分判定基準および復旧技術指針講習」(日本建築防災協会主催)を受講しなければならない。

日頃から管理組合(管理組合団体)は、このような資格者とコミュニケーションが取れる関係にしておくのが理想だ。 では復旧の状況はどうだったのだろうか。 り災証明や地震保険の判定を巡っては、管理組合は判定に不満がありつつも、資金獲得に血眼になった様子がうかがえる。資金的に潤沢だったマンションはどこも合意形成がスムーズに行われ、復旧も早かった。

 

復旧に手間取っているマンションは、古賀教授によると、次のような特徴があるという。

1.復旧方法を知っている人・できる人がいない。被災度区分判定があることを知らない。

2.「降ってわいた災害」なのでお金がない。地震保険に入っていない。(災害を想定した資金の準備がないということ。)

3.復旧の人手がない。(日ごろから建築士や工務店等と付き合いも必要ということ。)

4.区分所有者の連絡先が分からない。災害時の緊急連絡先の名簿がない、準備していない。(この場合、携帯電話の番号やアドレスが有効)どこへ避難しているかわからないから、復旧の話し合いができない。これは「今後も全国で繰り返される問題だ。」と古賀教授は述べていた。 その他、悪質なコンサルタントや補修のノウハウのない会社につけこまれ、詐欺まがいの契約を結ばされた管理組合もあったそうだ。復旧を急ぐあまり、焦ってしまうとこういう結果になりかねない。 日本マンション学会は、被災マンションの管理組合に寄り添いながら様々な相談を引き受けている。

 

管理組合の「困ったこと」は次のようなものであった。

①被災状況の診断・判定

②修理方法、修理費、専門会社の紹介

③資金

④合意形成(の困難さ)

⑤り災証明、地震保険の判定

⑥行政の補助・補償に関すること

大災害にあったときに、マンションの管理組合が直面する共通の課題ということだろう。大災害に備えるには何が必要か、見えてくるのではないかと感じた。

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