今回見学させていただいたグランドベイヒルズ横浜管理組合は、竣工1990年(築31年)、10階建て、105戸のマンションである。今回は管理組合元理事長の岸一正氏、導入に際しアドバイザーとなったNPOグリーンパワーファクトリー(GPF)篁氏、施工を行った太陽住建株式会社の近藤氏、原氏に話を伺った。
5年前(築後24年)に2回目の大規模修繕工事(インナーサッシ、玄関扉交換)を終え、また給水設備を直結に変更している。2018年より、今後のマンションの資産価値を高めるための検討を修繕委員会で開始、災害時の対策として太陽光発電設備を昨年(2019年4月)導入し、約1年半が過ぎた。
もともと共用部分の照明(廊下、階段、外灯)は、外灯以外は昼間も点いているために、共用部分の電気代が割高となっていた(使用料によって、基本料金も高くなる。)。太陽光発電導入により、電気代は導入前より月額2万円程下げることができた(基本料金も減額)。
通常は8時から蓄電を開始し、蓄電池をフルに充電した後、共用分電盤へ供給するようにしている。19時から10%残して放電を行っている。
災害などにより停電が発生した場合は、マンション共用部分の照明器具や対策本部となる集会室へ電気を供給できるため、情報収集や必要な対策をマンション内で行うことができ、避難所へ行かずとも安全に自宅避難が可能となる。2基のマンホールトイレも敷地内の公園に設置対応済である。費用は、パネル、パワーコンディショナー(PCS:太陽光パネルで発電した電気を、家庭で使用できる電気に変換するための装置)2台、蓄電装置1台、設置工事費含めて約630万円であった。
屋上のスペースは十分あり出力30kwまで拡張できたが、費用対効果を考え18kw(パネル60枚)とした。
蓄電池(9.8kwh)は1台のPCSに接続しており、特定負荷(特定エリアの電気を使用すること)とすることで、廊下、階段、コンセント、集会所など停電時には必要な個所のみ電気を供給している。(エレベータは動力のため蓄電池とはつながっていない。)通常の停電時は、蓄電池により共用照明は夜間の非常灯の役目を果たすことが可能であるが、停電が長期化する場合には、廊下や階段のブレーカーを落としてポータブルなLED投光器(現在35台)を各フロアの廊下に配置し、集会所(災害対策本部の照明、エアコン、冷蔵庫、コンセント)への蓄電池からの電気の供給を長時間続けられるようにしている。翌朝、太陽電池が発電を始めたらLED投光器のバッテリーを充電する。
太陽光パネル設置工事に際しては、荷揚げは駐車場からクレーンで行った。防水修繕工事は翌年の予定であったが、屋上のパネルを設置するために防水工事を半分だけ、1年早めて行っている。パネルの下は20年保証のウレタン塗膜(ジェットスプレー工法)とした。パネルは東西に、山形に架台の上に設置しているが、架台自体はブロックを重石にしており、躯体には固定していない。加重は1平米あたりパネルと架台込みで30㎏程度である。2019年秋の台風ではまったく異常はみられなかった。現在定期点検は行っていない。設置後5年目あたり点検を予定している。それまではモニタで異常を確認でき、また管理者が容易に、屋上で目視可能である。
太陽光設備導入については、投資型および自家消費型太陽光発電の選択、ソーラーパネル・パワーコンディショナー、蓄電池のメーカー選定、どのような使い方をするか、施工会社の選定、設置方法の決定など検討が必要になり、それぞれのマンションによっても使い方、設置方法が異なるため専門家のアドバイスが必要である。今後も電気代が上がることを想定すれば、長期的には経済効果につながると思われる。また国の施策として自家消費を支援しているため、補助金制度を利用することで導入しやすくなると思われる。(文責/防災WG星野克江)